三男日記

愛知県蒲郡市出身、今東京におります三男です。日常や社会について思ったことを書いていこうと思います。基本、空論・評論です。自分の勉強も兼ねてやってます。

大阪市民は、ローカルで生きることを選んだ。

大阪都構想を巡り、大阪市を廃止して特別区に移行する住民投票が昨夜、否決されました。

 

大阪維新の会ができて10年近くたちますが、橋下さんを擁してもなしえなかった5年前の悲劇が、今回も再現されました。

 

論点になっていたのは、住民サービスが低下するかどうか?という点だと思います。

 

直前に大阪市の財政局が基準財政需要額に関して誤った試算を出して撤回していましたが、(この報道により、反対派が勢いづいた面は否めないのではないでしょうか)

反対派は市を区に分割することによってスケールメリットがなくなり、行政コストが上がってしまうから住民サービスが低下する、と主張し、

賛成派は、財源を調整するからそんなことはない、と主張する。

 

真っ向から向き合っていましたが、

僕は、都構想の本来あるべき論点はそこではないと思っています。もちろん、住民サービスも大事ですが、住民サービスについては、そんなに大きく変わることはないと思いますし、都構想によるメリットではない。

 

むしろ、僕は「大阪という都市が、世界と戦っていくための制度をつくるかどうか?」ということだと思います。

 

大阪は副首都を掲げているものの、政令指定都市の人口では横浜に負けています。福岡も神戸を抜いているように、大きな成長を遂げ、アジアの玄関口として目立ってきています。

 

そんな中、大阪はこのままでいいのでしょうか。

 

政令指定都市で「大阪市」が存在し、その上に「大阪府」が存在している現状では、大阪の都市政策は、「大阪市」の中でしかできないようになってしまいます。

 

交通政策でいえば、大阪メトロの前身の大阪市交通局大阪市外に地下鉄を延伸するメリットがなかったのは、まさにその象徴です。東京は、国営(営団)と都営の2つがあり、幅広い地下鉄網を築き上げています。

 

大阪の問題点は、もっと広い人口規模で都市政策が行われるべきなのに、「大阪市」の目線でしか話せないため、東京とは比べ物にならないくらい差がついていますし、世界と戦えるような都市戦略は描ききれません。

(今は維新の会主導で、大阪観光局、大阪港湾局、大阪産業局など、「大阪」視点で様々な政策を統合する流れになっています。これはすごくいいことだと思います。)

 

ニューヨークもロンドンもパリも、二重行政なんて聞いたことがない。市長が強い権限を持ち、都市戦略を進めていっている。

 

だから、大阪都構想で、大阪市を廃止して、広域行政は「大阪府」に移管する、ということは、大阪がグローバルに都市として戦っていくうえで、大阪という都市戦略に見合った自治体を一つにまとめるという点で必要な制度だったと思うのです。二重行政の解消は、そうしたメリットを具体的に表現した一つにすぎません。

 

極端に言えば、大阪全体を見るマクロ的な政策(グローバルな方)は大阪府、大阪の住民のミクロな住民サービス(ローカルな方)は、特別区がそれぞれ担うという役割分担をして、都市政策大阪府だけに一元化して、大阪市の範疇を超えた広いエリアとして戦っていくということ。

 

ただ、問題は、こうした分担のメリットが今すぐ享受できるものではなく、子供世代孫世代にならないとわからない、という代物であるということです。街づくりは長期的スパンの事業ですし、すぐ目に見えて変わった!ということではないです。

 

短期的な視点で見たら、住民サービスが低下しないかな?と心配になるのは当然っちゃ当然ですが、

長期的な視点で見たら、そんなことは些末な視点で、これからも大阪が成長できるのか?というそもそもの大阪のパイを広げる方がいいに決まっていますから、大阪都構想はやるべき政策だったともいえるかと思います。

 

(もちろん、大都市行政が大阪都構想でしか実現できないわけではないですが、現状、これがベターな選択だと思います。自民党大阪府連も、共産党も、めちゃくちゃ反対していた割に現状維持以外の対案は出せていないようですし)

 

若者と高齢者、キタとミナミの利害の対立も背景にあるのでしょうが、否決された結果を見ると、大阪市民が、「大阪府大阪市」というあくまで「ローカル」な世界で生き続けることを選び、Osakaとして、東京に並ぶ世界都市として「グローバル」に戦うチャンスを、目の前の住民サービスが良くなるか否かという視点で、放棄してしまったように見えます。

 

大阪市内の高齢化についての参考:

大阪都構想を拒否した高齢者は大阪の「安楽死」を選んだ | 池田信夫 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

大阪市内の南北格差についての参考:

「大阪都構想住民投票」で浮き彫りになった大阪の「南北格差問題」(古谷経衡) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

うめきたや、万博など、大阪が経済成長するための起爆剤はちらほら見えますが、今は維新の会同士でうまくいっている大阪市長大阪府知事が、今後維新の会とは別の政党になったとき、そうした成長が止まってしまうかもしれません。

 

大阪は、都市としてもう一伸びできるチャンスを逃し、惜しいことをしたような気がします。