三男日記

愛知県蒲郡市出身、今東京におります三男です。日常や社会について思ったことを書いていこうと思います。基本、空論・評論です。自分の勉強も兼ねてやってます。

普天間基地の辺野古移設について思うこと。

普天間基地辺野古に移設することをめぐる問題。

 

沖縄県と政府の間で未だに揉めています。

県知事選や市長選のたび、論点に上がります。

 

 

みなさんは、普天間基地辺野古に移設することについて、どう思われるでしょうか。

 

環境破壊だからよくない?

沖縄県の民意を聞くべき?

辺野古移設は白紙にすべき?

 

 

結論から言えば、

僕は辺野古移設という結論から変わることは、現実問題としてないと思います。

 


あらゆる可能性を検討して二転三転した結果、辺野古に落ち着いたわけです。

 


まず前提として、世界一危険と言われる普天間基地を移設するということは、総じて賛成を得られるだろうと思っています。

 


問題はその先です。

 


どこに移設するか、辺野古でいいのか?で揉めているわけです。

 


ただ、米国が普天間基地を返還するということは決定事項としたうえで、

辺野古以外に移転先があるのか、ないのかに関しては論じ尽くされている気がしています。

 


幸か不幸か、民主党政権のドタバタがあったおかげで、辺野古以外の選択肢についてもオープンな状態で検討されました。


うるま市のホワイトビーチ、米空軍嘉手納基地などの辺野古のキャンプシュワブ以外の米軍基地に海兵隊基地を合体させる案は、ダメでした。

沖縄以外でも、佐賀、徳之島などもダメでした。

 


現状の辺野古移設というのは、相当なる調整のもと、辺野古に決定した経緯があります

 

守屋武昌元防衛事務次官が著した「普天間交渉秘録」によれば、

日本内では官邸、防衛省、外務省、沖縄県、名護市、沖縄経済界、

米国ではホワイトハウス国務省国防総省海兵隊、空軍など、さまざまなプレイヤーとの調整を経て、現状のV字滑走路という結論に至ったわけです。


相当なる調整の結果として生まれたこの解決策ですが、辺野古移設を白紙としてここまでの苦労をパァにすると、それこそ普天間基地の返還すらままなりません

 


無責任に、辺野古移設反対、環境汚染反対!という人は、今までの議論の重みを踏まえて代案を示すべきだと思います。理想だけでは物事は進まないような気がします。

 


辺野古移設の案については、沖縄や米軍の意図を汲み取って調整したものになっているわけです。


ただもちろん、当時の沖縄県知事である稲嶺恵一知事の主張していた、

「軍民共用」「使用期限15年」という条件が実現されなかったことは事実です。

しかし、結局基地が当初構想されていたようなヘリポート、撤去可能な基地というものから、埋め立ての基地になったのは、稲嶺知事の意向ですし、工事の利権を獲得したい沖縄土建業の意向もあったことは、忘れてはならないと思います。

 

(稲嶺知事は、恒久的な施設にし、軍民共用とすることで本島の北部振興に役立てたいという意図があったようです)

 


表に出てくる沖縄の建前と、裏側の沖縄の本音を見ないといけない気がします。


事実上基地負担と紐付いている「沖縄振興予算」というものは、政治家、その裏にいる経済界にとって想像以上に大きいようです。

 


環境破壊反対!という意見もありますが、実際那覇空港も拡張に伴い埋め立て工事をしているわけで、

本当に環境破壊に反対なのか、

それとも米軍基地によって環境を破壊されるのが反対なのか(つまり米軍基地に反対、という声に近い)

を見るべきです。

参考

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/64391

 

 

 

さて、辺野古移設の文脈でよく言われるのが、辺野古移設問題について国民的議論をしなければなりませんというものです。


ですが、そういう人に限って、何を話すべきなのかが曖昧な気がしています。

 


だって、辺野古移設そのものについて話しても、答えは出ているわけですし、今までの官僚、政治家によるあらゆる検討を経た苦労が積み上げられているものを議論したところで意味がない気がしています。

 


それでは、本土と沖縄の基地負担の不平等について、議論すべきなのでしょうか。


本土ももっと米軍基地を受け入れるべきだ!ということを言いたいのでしょうか。


一応、人口が密集している神奈川県にも厚木基地(綾瀬市大和市)、

首都東京にも横田基地(福生市)がありますし、東京の麻布にも米軍基地があります。麻布ヘリポートというものです。


話が逸れました。

 


国民的議論をしなければ!という主張には一理あると思っていて、確かに、本土と沖縄の米軍基地負担についても、考えるべきところはあります。


しかし、僕は一番話すべき論点は、基地負担の不平等さではなく、

米軍の存在意義」だと思っています。

 


つまるところ、日本の安全保障をどう維持するか、という点です。

 

 

なぜなら、現状の議論では、その観点が抜けているからです。

 

辺野古に移設する、ということは、海兵隊の基地が日本に、沖縄に必要だという暗黙の前提に立っていますが、果たして本当にそうなのか。

 


本土との基地負担の不平等とかを話す前に、

そもそも米軍っているんだっけ?

基地ってなんでこれだけあるんだっけ?

という点を納得することが大事だと思います。

 

 

サンフランシスコ講和条約で日本が独立し日米安全保障条約が締結されてから、時代も日本も大きく変わりました。


敗戦国として連合国に占領され、焼け野原の状態から、今や世界の経済大国となりました。

日米安全保障条約のおかげで、日本は軍備拡大より経済成長にお金を投じることができました。防衛費も先進国と比べて抑えられているのは、米軍が駐留していることが大きいと思います。


一方マクロ的に見れば、アメリカの力には陰りが見える中で、アジアでは中国や北朝鮮が台頭してきています。中東ではテロも頻発しています。

 


日本国憲法前文に書かれているような、

「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意し」た結果としての「憲法9条」が未だにこの国の安全保障政策を縛っているような現状は、時代に見事に合っていません。


(少なくとも、変えない!変えてはならない!と固守するのではなくて、

変えないならどうすればいいのか?どうすれば変えなくて済むのか、を護憲派は主張すべきです)

 

日本の立場と時代が大きく変わった以上、敗戦国レジームたる日米安全保障条約をそのままで考えるのではなくて、

日本は今後安全保障をどうしていくのか、米軍の位置付けはどうするのか、を本気で考えるべきだと思います。

 


少し辺野古移設問題に絡めてブレークダウンすれば、

沖縄になぜ米軍基地があるのか

そして日本にとって海兵隊は必要なのか、という点になるかと思います。

 

 

辺野古移設という点でいえば、

僕は海兵隊が日本に・沖縄に必要か、という視点が大切だと思っています。

 

論点としては、アメリカが海兵隊をどこに展開したいか、という視点もありますが、日本側で考えるとすれば、

海兵隊が日本の安全保障にとって抑止力になるか否かという点でしょう。


鳩山首相も当時

「学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍全体のなかで、海兵隊は抑止力が維持できるという思いに至った」と発言している通りの、「抑止力」です。


抑止力とは、辞書の定義を借りると、

活動をやめさせる力

思いとどまらせる力

です。


日本に対する攻撃を思いとどまらせる力、という意味合いになります。


その抑止力ですが、

結論から言えば、

僕は海兵隊が沖縄にいることは抑止力にならないと思っています。

 


海兵隊とは、よく言われる通り、戦争の最前線で敵地を攻め取る殴り込み部隊です。

陸海空軍とは違って、守備隊ではありません。

 


戦争が始まったら、さっと展開して橋頭堡を作り、あとは陸海空軍に引き継ぐことが仕事です。

 

海兵隊の性質を考えれば、

例えば中国が何か日本の領土を取ろうと考えた時、沖縄に海兵隊が駐留しているからすぐ取り返されるだろうから攻撃やめようかな‥‥‥とはならないのではないでしょうか。

 


だって、一番の抑止力は、「日米安全保障条約」それ自体があること、であるはずです。

 


日米安全保障条約第5条という規定があります。


各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。(以下略)

 


外務省による条文解説によれば、

「第5条は、米国の対日防衛義務を定めており、安保条約の中核的な規定である。

 この条文は、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」としており、我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には、両国が共同して日本防衛に当たる旨規定している。」


とあります。

 


つまり、日本の領域を犯そうとした、攻撃しようとしたら、米国が5条に従って防衛義務を負う、という規定です。

 

オバマ大統領が、尖閣諸島日米安全保障条約第5条適用の対象になる、と言明したことは、尖閣諸島をめぐる中国の攻勢に抑止力になりそうです。


尖閣諸島を攻撃すると、アメリカが自国への攻撃とみなして自衛権を行使するぞ。という規定だからです。

 


海兵隊の話に戻せば、

カギは、

「すぐ攻撃し返されるか否か」ではないと思います。

だから、日本防衛にとっては、沖縄に海兵隊は別にいらないのです。

 

 

僕は、海兵隊は沖縄でなくても良いと思います。

日本の安全保障にとっては、グアムでも十分だと思います。


(本当に防衛義務を果たしてくれるとしたら、海兵隊はグアムからでも飛んできてくれるはずです)

 


逆に先鋒隊が沖縄にいることで、ミサイル等ですぐやられてしまう可能性もあるわけで、リスクは上がります。


離島防衛を考えれば、さっと動いて奪い返す部隊も必要だと思いますが、

陸上自衛隊にも、離島防衛、奪取のための西部方面普通科連隊(現:第1水陸機動連隊)が長崎にいます。

 


なおかつ、日本に駐屯している米軍は海兵隊だけではなく、空軍も沖縄の嘉手納、横田、三沢にいますし、海軍も横須賀、佐世保に大規模に駐屯しています。陸軍もいます。

 


台湾海峡有事の時や、朝鮮半島有事の時に米国が威圧のために出動させたのは、海軍の原子力空母でした。展開できる部隊は、海兵隊だけではありません。

(原子力空母に率いられる統合部隊の一構成要素としての海兵隊、という側面はもちろんありますが、攻撃のための兵員は必ず必要なわけではないと思います。原子力空母の強みは航空機を積載し、展開できる能力にあるのですし。)


沖縄という西太平洋の要の位置を活かせるのは、嘉手納基地に駐屯している米空軍ではないのか、という考えもあります。

 


ただ、海兵隊の側の視点で考えれば、沖縄の訓練施設は魅力かもしれません。東村にある北部訓練場は、ジャングル訓練ができますし、ベトナム戦争用に対ゲリラ対策の訓練を行っていたみたいです。

 

 

以上を踏まえると、

沖縄に海兵隊が駐留しているのは、「沖縄」という地理的要因ではないような気がします。

 

 

何より、訓練施設も然りですが、沖縄の居心地の良さが原因なのではないでしょうか。


訓練などの軍事的要素にとどまらず、法律などの環境もあると思います。

 


日米地位協定」に守られているおかげで、事故が起きても日本の捜査機関に捜査させないこともできるし、犯罪を犯しても実質上裁けないこともあります。

 


日米地位協定入門」によれば、日米地位協定と実際の運用では、

日米地位協定17条により、

公務中の犯罪についてはすべて米軍側が裁判権を持つ

公務中でない犯罪については日本側が裁判権を持つが、(基地内に逃げ込んだりして)犯人の身柄がアメリカ側にあるときは、日本側が起訴するまで引き渡さなくても良い

となっているようです。


かつ、日米合同委員会の非公開議事録では、日本側は、米軍関係者についての裁判権を放棄する密約が結ばれていたそうです。

 


米軍の待遇に関しては、NATO諸国と比較しても、異例の甘さです。

 


つい先日、沖縄タイムスの記事でこんな表がありました。

 

f:id:fujikei0720:20190511181939j:image

 

 

いや、日本は甘いです。


毎年2000億円規模の思いやり予算もあり、

訓練も、夜間飛行も無法地帯と化しています。

オスプレイも、日本側の意向を無視して配備されます。

 

 

日米の間に従属関係はないとはいうものの、

実際従属関係と言われても仕方のない待遇を取っていることは認めざるを得ません。

 

 

沖縄県民、日本国民が米軍基地を嫌がるのは、自衛隊と異なって住民に配慮がなされない実情、日本国が米軍から自国民を守ってくれない実情があるこらこその不安なのではないでしょうか。

 

 

日米安全保障条約に基づく日米関係は、非常にブラックボックスです。


横田基地周囲の管制権を取られているために羽田空港を思う存分に活用できていない、いわるる「横田空域の問題」もあります。

 


安保マフィアという言葉もある通り、エリートの巣窟と化しています。

 


日米合同委員会がその象徴です。

日米合同委員会には外務省防衛省だけではなく、法務省の官僚も構成員であり、司法も日米関係に絡め取られています。

 

 

米国の駐留は必要だと思いますが、やりたい放題は、許してはいけません。

 

そういう事実上の従属関係を是正していくためにも、そもそも米軍との関係も含め、日本の安全保障を考える必要がありそうです。

 


となると、

沖縄の米軍基地問題の本質は、日本の安全保障そのものであると思います。

 

そもそも日本に米軍基地が必要なのか。

沖縄に駐留する必要があるのか。沖縄でないとダメなのか。

 


そこから逃げて沖縄の基地だけの議論をしている限り、その場しのぎで真の解決には繋がらない気がします。

 

 

とりとめのない結論になってしまいました。

 

普天間基地辺野古に移設することはプロセスとして変えられないのではないか。

・ただ、現状の議論には、そもそも米軍が日本に必要なのかという観点が抜けている。

・沖縄基地問題の本質は日本の安全保障問題そのものであり、米軍が日本に必要か、沖縄に必要かという観点で見るべきだ。

・そのように考えると、そもそも海兵隊は、沖縄に必要ないのではないか。

・日本の安全保障を考えていく中で、日米地位協定はじめとするアメリカへの事実上の従属関係を是正していくべき。

 

(冒頭、辺野古移設は動かせないのではないか、という結論を言っていますが、

あくまで「海兵隊が沖縄に必要であるとするならば」という前提に立つと辺野古移設は揺るがない、ということであり、

僕自身は海兵隊自体沖縄にいらないと考えているので辺野古移設もクソもないのではないか、という考えです。)

 

 

そういう話でした。

 

参考文献

普天間辺野古 歪められた二〇年 (集英社新書) https://www.amazon.co.jp/dp/4087208311/ref=cm_sw_r_cp_api_i_Tsa2CbPC2GS19

 

普天間」交渉秘録 (新潮文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/4101366616/ref=cm_sw_r_cp_api_i_bta2Cb5WZNPHR

 

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (戦後再発見」双書2) https://www.amazon.co.jp/dp/4422300520/ref=cm_sw_r_cp_api_i_.ra2Cb0X4KF8S