三男日記

愛知県蒲郡市出身、今東京におります三男です。日常や社会について思ったことを書いていこうと思います。基本、空論・評論です。自分の勉強も兼ねてやってます。

性加害問題で本当に反省すべきなのは誰か。

ジャニーズ事務所の性加害問題だ。

 

ジャニーズ事務所による記者会見を多くのメディアが報じ、世間はジャニーズ事務所の醜態を目の当たりにすることになった。

 

報告書を読んだが、ジャニー氏の性加害が気持ちが悪いほど生々しく記されており、被害者の方々が幼いタイミングで何を経験し、その経験がその後の人生においてもどれだけ消し去れない壮絶なものであったのか、非常に苦しい気持ちにさせられた。

 

www.johnny-associates.co.jp

 

会見後の報道では、

ジャニーズ事務所のガバナンス(藤島ジュリー氏が引き続き株式を持つことについて)

ジャニーズ事務所が社名変更をしないのか

など、ジャニーズ事務所を批判的な視点でとらえた報道が多い印象だ。

 

ジャニーズ事務所において、ジャニー氏の性加害を止められなかったことは大きな問題だと思うし、東山社長が「鬼畜の所業」と言及したように、性加害がおこなわれていたこと自体、全くもってありえないことだと思う。

 

そうした一方で、多数の企業から所属タレントのCM契約を解除されるなど、社会的制裁を受けつつあり、今後も社会からの厳しい目線を浴び続けることになるのだから、二度とこういうことがないようにしっかり反省し、生まれ変わってもらいたいと思う。

 

なお、あくまで、一企業の中でのガバナンス問題として本件をとらえると、類似の事件は多数あるし、ジャニーズ事務所に限った話ではないと思う。

 

井ノ原(子会社)社長が「得体の知れない、それに触れてはいけない空気はあった」としたのは、サラリーマンとして非常に共感できた。

財務省の決裁文書改ざん、東芝の不正会計、直近でいうとビッグモーター事件など、組織における“忖度”問題は、どういう組織であっても起こりうる問題であり、そういう意味では、ジャニーズ事務所だけが特殊であるわけではなく、本件を他山の石として、社会全体が襟を正すべき事案だと思っている。

 

 

そうした前提のもと、僕としては、性加害問題で強く反省すべき存在が真剣に反省していないことが気になっている。

 

マスメディア(特にテレビ局)だ。

 

マスメディアの責任については、報告書にこのような記載がある。

 

【p.52】

4 マスメディアの沈黙

ジャニー氏の性加害の問題については、過去にいくつかの週刊誌が取り上げてきたものの、2023 年 3 月に BBC が特集番組を報道して、その後、元ジャニーズ Jr.が性加害の被害申告の記者会見を行うまで、多くのマスメディアが正面から取り上げてこなかった。 例えば、上記のとおり、2000 年初頭には、ジャニーズ事務所文藝春秋に対して名誉毀損による損害賠償請求を提起し、最終的に敗訴して性加害の事実が認定されているにもかかわらず、このような訴訟結果すらまともに報道されていないようであり、報道機関としてのマスメディアとしては極めて不自然な対応をしてきたと考えられる。

(後略)

 

この問題提起について、マスメディアは真剣に回答をすべきだと思う。

 

各社、コメントを出しているが、全く反省になっていない。

natalie.mu

 

加えて、キャスターに話させている「テレビ局自身も考えないといけない」というコメントもどこか他人事だ。

 

少なくとも、

・性加害問題について、マスメディアの責任をどうとらえているか

・なぜ、性加害問題を報じてこなかったのか

・そのほかの事案で、同様の不作為をしたケースは存在するか

・今後、類似の事例が発生した際にどのように対応するか

といった点について、総括をすべきだと考えている。

 

思うに、マスメディアがジャニーズ事務所に対して過度に気を使っていたことは容易に想像できるし、ビジネスの構造上やむを得ない部分もあることは承知している。

 

具体的には、ジャニーズ事務所と密に仕事をしている「芸能部門」が忖度することについて、しょうがない部分があると思っており、そうした忖度はマスメディアだから起こった話ではない。

 

例えば、「広告代理店」も同類であり、具体的には、博報堂は、ビジネスパートナーであるジャニーズ事務所に配慮していることがあらわになっている。

note.com

 

note.com

 

他の業界だと、まさに今注目されているビッグモーターと損保会社の関係においても同様だと思う。

 

もちろん、これが許されていいという話では全くないが、ビジネスパートナーに忖度するということは構造的には起こりうる話で、ジャニーズ事務所・芸能業界に限らず、若干しょうがない部分もあるということだ。

 

 

としたとき、

性加害問題におけるマスメディアの責任を考えるうえで見過ごすべきではないのは、「報道部門」(情報部門含む)の不作為である。

 

本来、芸能部門とは距離をおいて、報じるべきことを報じることが仕事であり、ことテレビ局に至っては、性加害問題を報じることは、日本の電波を免許制で占有している主体として当然果たすべき義務であると思う。

 

しかし、それをしてこなかった。BBCという海外ジャーナリズムが性加害問題を報じるまで、文字通り1ミリも動かなかった不可思議

(そうしたことにおかしいと問題提起する内部告発もない。ただ、少なくとも、社内で誰かは、報じるべきだと声を上げていたと信じたい)

 

こうしたマスメディアの不作為が根深いのは、同様の事例は、性加害問題だけにとどまらないからだ。

例えば、少し前だと、

ジャニーズ事務所SMAPから独立した「新しい地図」を一時期全く起用しなかった

・事務所から独立した「能年玲奈」を一時期全く起用しなかった

といったことは類似の忖度が働いているとみるべきだ。これらについては、性加害問題のような明白な”被害者”が存在しているわけではないが、異常な現象にしては全く報道がなされることもない。

独占禁止法の観点からは、公正取引委員会が動くべき事例ではあるが。)

 

直近の低俗な例では、

ダウンタウン浜田の不倫をどの局も報じない

friday.kodansha.co.jp

という事例もあった。

 

こうした事例があることから推測するに、マスメディアがニュースを報道するということにおいて、不作為を引き起こす何等かの構造的な問題があることを示唆している。が、マスメディアはどの局もそうした不作為問題には向き合わず、自身は正義の味方であるかのように性加害問題だけで終幕させ、不作為問題には蓋をしようとしている。

 

 

本来、マスメディアには報じない自由ももちろんあると思うが、一方で、報じる義務ももちろんあると思う。

 

報告書には、このような指摘がある。

 

【p.56脚注】

「入所前からジャニー氏による性加害の噂は知っていたが、具体的な想像はできなかった」 と語る被害者もいた。せめて、ジャニー氏による性加害の事実が大々的に報道され、さらに 真実性をもって世間に周知されていれば、ジャニーズ事務所に入所する(ジャニーズ Jr.となる)ことを思い止まった若者も出たのではないかと推察され、(後略)

 

この文章を読むと、性加害問題は、マスメディアがきちんと報じていれば被害者はもっと少なく済んだはずだとわかる。何より、ジャニー氏本人が生きているときにきちんと罪を償わせることができたはずだ。

 

マスメディアの不作為によって犠牲者が増え続け、さらに罪の追及の機会が失われた。報じることでジャニー氏の性加害は防げたはずだし、報じられないおかげで逆にジャニー氏は安全地帯から悪事に手を染め続けられた。

 

性加害問題は、ジャニー氏自身の問題・ジャニーズ事務所の問題であることはもちろんだが、マスメディアの不作為によるところが多分にあると思っており、それが性加害問題の本質だと思う。

 

もちろん、マスメディア自身が、自分のところはビジネス第一で、公平なジャーナリズムを目指さない、とするのであればそれはそれでいいと思うが、自身が「ジャーナリズム」を建前として標榜するのであればそれなりの責任があると思うし、それを果たせなかったことに対して、自浄作用をはたらかせるべきだ。

 

本質的には、マスメディアが反省しないと、性加害問題のような問題は必ず繰り返すと思う。

 

その時、マスメディアはまたしても容疑者を断罪するだけなのだろうか。。。

 

(日本のマスメディアジャーナリズムが、BBCという海外のメディアに完膚なきまでに叩きのめされたことことが、何より寂しすぎる。。。)