好きな映画は何、と聞かれると困る自分がいる。
好きな映画を聞かれる際は、聞かれる誰もが思うことだと思うが、言ってクールに見える映画を言いたい。
(雑誌のおすすめ映画特集に王道の映画はきっと出てこなくて、ちょっとコアな、マイナーな、知る人ぞ知る映画ばかりが出てくるのは、そういうことだ)
でも、そういった邪念を措いておいて、
「好きな映画」を「何度も見てしまう、セリフを覚えてしまうくらいハマった映画」だとするならば、僕の中の1番好きな映画は間違いなく、
「踊る大捜査線 the movie 2 レインボーブリッジを封鎖せよ」だ。
踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
世代としては僕世代ドンピシャじゃないのだが、年の離れた兄の影響で踊る大捜査線のドラマを見はじめ、そのままズブズブはまっていった。
警察ドラマとして、いわゆる探偵ドラマのように、主役が見事に鮮やかに事件解決がする、という点では、踊る大捜査線は全くそんなドラマではない。
刑事が出てくるのに、このドラマは警察ドラマなんかではなく、サラリーマンドラマだと思っている。
事件を解決するとか、人がギリギリで助かるとか、そういうことにワクワクするよりもむしろ、人間関係の中で何が起こって、どう解決されるのか、という組織プロセスこそが、踊る大捜査線の真骨頂だ。
本庁・キャリア官僚(警視庁)と所轄(湾岸警察署)の間の上下関係はさることながら、
それぞれの、本庁内・所轄内での利害対立も描かれるなど、登場する誰もがそれぞれの「間」に挟まれていて、何事もまっすぐ、やりたいことを突き詰めきれないサラリーマンの難しさが十二分に描かれている。
みんな「正しいと思ったことをやりたい」という強い信念はあるのだけれど、
でも、組織の利害などが絡み合ってうまくいかないもどかしさ。
「レインボーブリッジ」で有名なセリフは、犯人確保のためにレインボーブリッジを封鎖しようとした青島が発した、「レインボーブリッジ、封鎖できません」だと思うが、
普通、「○○ができない」ことが名言となる警察ドラマはないと思う。笑
あれほど、theサラリーマン社会たる日本をシンボリックに描いた作品はないのではないか。
「レインボーブリッジ」のコンセプトは、組織の在り方、が1つの主題になっており、通常のマネジメントでうまく封鎖できなかったレインボーブリッジが、室井さんの的確なマネジメントにより「レインボーブリッジを封鎖」できて最終的に犯人を確保する、という単純に快活なストーリーラインであることはさることながら、
その周縁において、「レインボーブリッジの封鎖」をめぐって繰り広げられる中間管理職の悲哀を描いた人間模様が、めちゃくちゃ面白い。
とはいえ世間にはこの映画がリアリティに欠けていると批判するコメントも多々みられるものの、映画とはそもそもフィクションであり、コアにある伝えたいことの側縁部分に若干のお化粧がされていても、それはそれでご愛敬、だと思っている。
(そういう意味だと、実際は、やろうと思ったら簡単にレインボーブリッジは封鎖できちゃうらしい。けど、まあ封鎖できない、っていう発想にも全然納得感はあるので、そこまでリアリティに欠けている、というわけでもないような気もする。)
そんな踊る大捜査線の続編が、今度始まるらしい。
“踊るプロジェクト”映画最新作『室井慎次』公式サイト (odoru.com)
中間管理職で苦しみ続けた室井さんが、最後どういう人生を送ったのか、という室井さんが主役のスピンオフ映画らしい。
「現場を良くする」という信念を掲げ、警視庁・警察庁で出世の街道を上り続けるキャリア官僚たる室井さんが、偉くなった結果、何を成し遂げられて、何に苦しんだのか。
「中間管理職ドラマのフィナーレ」とは、若干矛盾した表現だと思うが、フィナーレがどう描かれるのか、今年秋の公開を楽しみにしたい。
(踊る大捜査線なんて古いドラマ、自分の周りであんまり見ている人いないから、ひっそりと楽しむことにしようかな。。。)