告白をします。
僕は田中が好きです。
田中です。
正確にいうと、田中じゃないです。
たなかです。
もっと厳密にいうと、「たなか」という単語にです。
小さい頃から、なんか「たなか」に親近感というか、愛着を持ってたんですよね。
たなか。
良くないですか?
いいなと思う理由は、
大きく2つあって、読みと、見た目です。
読みの部分から。
読みの部分は必ずしもひらがなじゃなくていいので、なんなら「田中」も当てはまるんですが、たなかっていう読み方が好きなんですよ。
それって、音だと思うんです。
まず全部「あ」のaの音です。
口をあんまり動かさなくていいんですね。aだと。
さらに、「た」で力を入れて、「な」で一旦力抜いて、「か」で息をハッと吐きつつ締める感じ。
「たなか」です。
「か」は、スタッカートみたいに、切れる音ですから、
最後に「か」が来るのがなんか歯切れがいいというか気持ちがいい。
「バカか、お前は。」の時の「か」ですよね。
落ち着いて、ゆっくり「たなか」っていうと、なんだか締まってますよね。
「たなか」が。
3文字の音的にも、
下から上に上がっていく感じで、読みやすい。
これはおまけですけど、濁音がないんです。「たなか」には。それがまたいい。
キレイな感じがします。
潔癖な人には「たなか」は向いてます。
次の理由は、文字の見た目です。
僕は、「たなか」というひらがなの文字がもつ、安定感と愛らしさが気になっています。
締めの「か」の、右上のチョンってやつ、ちょうどいい具合に湾曲しています。
その、傾き具合が、妙に落ち着く。
なんかかわいい感じがしませんか。
右側にだらけるように、傾いてるのが、なんかいいんです。
人間、誰しもダラダラしたいですから。
そして、また止められてるのがいいんです。
払ったり、はねたりしてない。
点がちゃんと止まってるから落ち着くんですね。
でも、「たなか」はかわいいだけじゃない。
「た」と「な」によってちゃんと引き締めています。
「た」はちゃんと全画止められてますし、「な」も、右上で下側にチョンとはねてから、一周するマルで回収します。
「な」の下の一周するマルは、絶妙な締まりを見せています。
ここは文字を書くうまさが目立つところです。
その2文字で、締めつつ、締めるばかりじゃなくて、愛らしい「か」で着地させる。
うーむ、素晴らしい。
「たなか」。
これほどいい3文字はない気がします。
僕はまだ見つけられていません。
「なかた」ではダメなわけです。
「た」が締まり過ぎていますし、「か」は音的に真ん中に来ると3文字の読み方が上がって下がる、という感じになっちゃいます。
たなかのように、最後に向かって上がっていくような1つのリズムでは行かないわけです。
「な」と「た」で、2つとも完全に止めの文字だから、そこに挟まれると、もう、何も手出しができないのです。
ちなみにですけど、
2文字は少ないので物足りないし、4文字は多いから圧を感じる。
3文字が1番慣れてて、気持ちがいい。
思えば、
僕の「たなか」との出会いは、コロコロコミックに当時連載されていた、「宇宙人田中太郎」という漫画でした。
そこで「たなか」と出会った僕は、やけに「たなか」が気になっていました。
たなか、たなか、たなか。
たなかたろう。
うーんなんだろうこの違和感。
そして、地元にできた「たなか葬祭」という葬式場の看板に書かれた「たなか」のひらがなを見て、またもや違和感に苛まれました。
たなか。
どうして僕はこんなに「たなか」がきになるんだろう。
ちなみに、漢字の「田中」のほうも、シンメトリーで、好きです。
「中」が、真ん中棒をニョキッと伸ばすのがさらに引き立てています。
「田」の絶妙なダサさを、「中」の棒が打ち消します。
田中。
ぼくは、田中・たなかが好きです。
そんな話でした。