三男日記

愛知県蒲郡市出身、今東京におります三男です。日常や社会について思ったことを書いていこうと思います。基本、空論・評論です。自分の勉強も兼ねてやってます。

10月論壇時評②「自民党の権力への執着」

さて、衆院選挙だ。

 

自民党が圧勝した。

 

佐藤信東京大学教授は、今回の選挙は、本来であれば安倍菅政治の評価を下すものであるべきところ、岸田首相に党首を入れ替えたことで、純粋な業績評価がしづらくし、責任の所在を曖昧にするという自民党の“不真面目さ”が現れていると指摘する。

自民党の「不真面目さ」再び 岸田新総裁の誕生は何をもたらすか [自民党総裁選2021] [自民] [2021衆院選]:朝日新聞デジタル

 

同時に、佐藤教授は、政治において権力を維持するためには、ある種融通無碍にふるまう“不真面目さ”が必要になってくるのだと語る。第一次安倍政権は、生真面目に取り組んだために退陣を余儀なくされた一方、第二次政権では独自の改憲案を出して保守層の支持をつなぎ留めつつ、中道からの広範な支持を得るために靖国参拝をやめるなど、“不真面目さ”を身に着けることに成功したと述べる。

 

また、岸田首相も、リベラルな志向を持ちながら改憲方針を出したりするなど、不真面目な文法を抑えていると指摘する。総裁選の時の高市候補(保守)、河野候補(脱派閥)、野田候補(リベラル)はいずれも自身の路線に生真面目であったと。

 

日経のコラムは、成立当初は田中曽根内閣と揶揄されながら、徐々に自らの政権運営の主導性を高めた中曽根康弘元首相の、「総理になってしまえばこっちのもの」という言葉を引用し、岸田氏自らがモットーとする「春風接人」(どんな人間にも爽やかに接すること)を捨てるべきだと述べる。

岸田首相、春風接人と決別を: 日本経済新聞

 

権力者たるもの、ある種の理想を捨て、割り切ることも重要なのだと思う。

(これを有権者が言ったら元も子もないが。)

 

実際、自民党は“権力者”になり切れている一方で、立憲民主党などは、“権力者”になりきれていなかったのではないか。

 

ある種理想主義的な公約を掲げていた一方、共産党との協力によって、有力な支持母体である連合は離れていった感がある。

立民・共産の閣外協力「あり得ず」 連合新会長が不快感:時事ドットコム

 

真の意味での自民党への対抗勢力になるためには、支持母体の意図も踏まえた戦略も必要な面もあると思う。そうした意味でのしたたかさが権力には必要だ

 

映画監督の大島新氏は、野党には、社会を変革せねばならないという立場での強い自己主張、自負心、理想主義、原理原則主義が先立っていて、対峙する勢力を許さないようなイメージが、世間には受け入れられなかったのではないかと指摘する。

自民にあって野党にないのは「集合知」 「北風」より「太陽」めざせ [2021衆院選]:朝日新聞デジタル

 

政治とは、“決めること”であり、単なる理想主義では立ち行かないことを有権者国民は十分に感づいているとすると、本当に権力を理解していないのは野党側の方ではないかと思う。

「民主主義の危機」「有権者は愚か」と言い放つ政治家や知識人 | アゴラ 言論プラットフォーム

 

そういう意味で、権力に執着する、自民党の底知れぬ強さが顕在化した選挙だったように思う。