三男日記

愛知県蒲郡市出身、今東京におります三男です。日常や社会について思ったことを書いていこうと思います。基本、空論・評論です。自分の勉強も兼ねてやってます。

2022年上半期のベスト5(本)

【本篇】

 

ない仕事の作り方(みうらじゅん

「ない仕事」の作り方 | みうら じゅん |本 | 通販 | Amazon

 

自称「一人電通」のみうらじゅんの仕事術がわかる本。

 

タイトルの通り、自分が好きなことを、どう世の中に受け入れさせ、仕事にしていくのか?ということを、マイペースかつ野心的に説明している。

 

みうらじゅんのスタンスの根本にあるのは、

「目の前の状況を自分なりに楽しみ、やり尽くしてみる」

ということ。

 

1日に数本しか来ないバスの時刻表を「地獄表」と呼んで楽しんでみたり、

仏像やゴムへびおもちゃをコレクションして、自分が世の中に伝えねばという使命感で発信したり。

 

ゆるキャラなどの命名者もみうらじゅんだが、みうらじゅんがしていることは、
「世の中のブームを言語化している(命名する)」のではなく、「自分のブームを言語化して世の中のブームにしている」に近いと思った。

 

めちゃくちゃ面白いし、くだらないし、だけどやっぱりすごい。

 

デザインのデザイン(原研哉

デザインのデザイン | 原 研哉 |本 | 通販 | Amazon

 

本の中を通底している「シンプルかつ重厚感ある文章」が素敵。

 

冒頭の入り。

「本書を読んでデザインというものが少しわからなくなったとしても、それは以前よりもデザインに対する認識が後退したわけではない。それはデザインの世界の奥行に一歩深く入り込んだ証拠なのである

 

なるほど、深い。。。

 

この本に書かれているデザインの断片は、例えば、紙のパンフレットで、雪と氷を立体的に表現するとしたとき、「雪と氷の紙を通して、雪を踏む記憶を呼び起こす引き金にする、この仕組みを計画するプロセスがデザイン」と述べている。

 

そのうえで、日本は、ヨーロッパや中国などいろんな文化が最後に行き着く「パチンコ台」のような国であり、「混とんを引き受け続けることによって、逆に一気にそれらを融合される極限のハイブリッドに到達した」と言い表しており、「辺境から世界を均衡させる叡智としてはぐくまれたもの」としての日本の美意識を再評価している。

 

こんな風に世の中を認識できるようになりたい。。。

 

国家はなぜ衰退するのか?

国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上) | ダロン・アセモグル, ジェイムズ・A・ロビンソン, 鬼澤 忍 | 世界史 | Kindleストア | Amazon

 

この本は、アメリカとメキシコの国境にあるノガレスという街に対する、筆者のシンプルな疑問から始まる。

「自由に発展した暮らしを楽しんでいるアメリカのノガレスと、貧困にあえぎ治安も悪いメキシコのノガレス。フェンスをまたいでいるだけなのに、どうしてこんなに差が生じているのか?」

 

国の在り方を決めるのは経済制度であり、どのような経済制度を持つのか決めるのは政治制度であると喝破する。経済的自由と政治的権利が保障されているアメリカでは、それぞれが働くインセンティブを持つことができるが、政治的に不安定で治安が悪く、働いても資産に対する安全性が見込めないメキシコでは、富は国全体にはいきわたりづらいということだ。

 

歴史を紐解いてもみても、重要なのは持続可能な成長であり、旧ヨーロッパの植民地制度やソ連共産主義などの収奪的な制度は持続不能な成長であり、長続きしないのだと述べる。

 

「現代において国家が衰退するのは、国民が貯蓄、投資、革新をするのに必要なインセンティブが収奪的経済制度のせいで生み出されない」

 

制度の違いはあったとしても、どの地域・国も経済成長の恩恵を受け取るチャンスはあるとするが、そうしたチャンスに巡り合った時の“決定的岐路”において“既存制度”がどのような作用を起こすのか?によってそうしたチャンスを生かせた国とそうでない国の差異が生まれるのだと喝破する。

 

なるほど、こうした考え方はあらゆる組織でも応用ができそう。。。

 

日本国の研究(猪瀬直樹

日本国の研究 (文春文庫) | 猪瀬 直樹 |本 | 通販 | Amazon

 

この本も、総事業費282億円の朝日連峰(新潟・山形の県境)の道で感じた、著者のシンプルな問題提起が根幹をなしている。

 

霞が関、永田町に次ぐ、虎ノ門」というキーワードをテーマに、国家に巣くう利権構造を解き明かしている本。綿密にリサーチがなされ、ゼロからここまで見つけている手腕に脱帽した。

 

特殊法人認可法人公益法人が複雑に絡み合い、地下茎のように自己増殖している。寄生虫のように国家財政を喰い荒らしている」ということを、様々な事例をもとに問題提起していて、出版から約20年たっているが、いい意味でも悪い意味でも色あせない。

 

単なるルポ本でもないため、文章も言い得ており、例えば「作業道」という道路に適合する道路に対しては行政から補助金が支出される実態を指して、「システムは災害に苦しみ涙する人々に冷たく、作業道という記号を通じてしか作動しない」と書いている。

 

行政の本質を喝破しているなと思った。

 

中央銀行白川方明

中央銀行: セントラルバンカーの経験した39年 | 方明, 白川 |本 | 通販 | Amazon

 

中央銀行総裁として、とりわけ任期の後半は日本をデフレにした戦犯として批判されることの多かった白川総裁。その批判に立ち向かう矜持が論理的に書かれており、めちゃくちゃ濃い本だった。

 

中央銀行の総裁は、「一国のチーフエコノミックエデュケーターであるべき」(短期的な金融政策に加え、一国のマクロ経済が直面している問題をきちんとした分析に基づいてわかりやすい言葉で説明していく義務)と考え、
そうした中でもなかなか世の中に真意が伝わらない葛藤もあったと書かれている。

 

批判を受けながらも、バブル期の経験を引っ張り、「バブル期には金融緩和の修正に反対していた国民が、バブル崩壊後は金融政策の失敗はすべて日本銀行の責任となったことを目の当たりにし、時代の空気に流されず、中央銀行として判断することの重要性」を身に染みて感じていたことが、総裁としての判断のベースになったと述べている。

 

総裁は決定会合で投じる票は審議委員と同等の1票でありながらも、そこで下された結論には全責任を負うという立場上の難しさも感じていたことに触れられており、

同時に、セントラルバンカーは、患者が他にどのような薬を処方されているかを知らないながらも正しい薬を処方することを求められる“薬剤師”のようなものである難しさにも触れられており、本全体を通して、「総裁をやりきったぞ」という感じよりも、「r中銀マン・中銀総裁としてどうすればよかったのだろうか」という苦悶がひしひしと伝わってきた。

 

ただ、金融緩和だけでは日本経済は浮上しない、というスタンスで貫かれており、見る人が見れば言い訳本にも読めるかもなと思った。笑

 

経済の勉強にもなった。