先日、映画「杉原千畝」を見ました。
第二次大戦中の日本の外交官(駐リトアニア領事代理)、杉原千畝の話です。ナチスドイツに迫害されていたユダヤ人が国外に脱出するためのビザを発給したことで有名な杉原千畝です。
ドイツ軍から逃れてきたユダヤ人を救うためのビザを発給しようとする杉原に対して、外務省はドイツとの関係性もあって認めようとしません。
そこで杉原はリトアニアから日本に行けるためのビザを独自に発給します。
その発給に至る過程も、杉原自身が周囲のポーランド人(独ソに占領され、自らの故郷を失っていた)の故郷に対する思いに感化され、自らの職を賭す覚悟を持ってユダヤ人と向き合うことを決めた葛藤のシーンは、深く考えさせられました。
自分が同じような大組織の一員で同じ立場だったらどうだっただろうか、ということです。
いくら相手の命を救うとはいえ、ある種国益に反することをやろうとしているわけで、クビにもなりかねませんし、自分の家族や自分の周囲にも迷惑をかけてしまいます。
それでもなお、そこに抗えたのは、杉原自身の信念が強くあったからじゃないでしょうか。目の前にいるユダヤ人と相対している中で、組織として、国としてという視点ではなく、ひとりの人間として何をすべきか?を考えたこと。
組織人としての振る舞いがいかに難しいかを痛感しました。組織人として自分を見失わないためには、強い自分の意思や信念が重要なんだと改めて思いました。
さて、この映画の何よりの肝は、単に杉原がユダヤ人を救う話ではなく、あくまで外交官(諜報を主に担当していたようですが)としての使命を果たしつつ、ユダヤ人を救ったのは杉原1人じゃないことが描かれていることです。
単にビザを発給しただけ、ではこども漫画になってしまいます。
重要なのはここからです。杉原の発給したビザを持ったユダヤ人が、日本の目の前のソ連ウラジオストクに殺到します。
そこで、問題となるのは、ユダヤ人を日本に受け入れるのかどうか?ということでした。
ウラジオストクで日本への船の乗船を拒否することを外務省から命じられた領事の根井三郎が、その命令を拒否し、独断で乗船させることにしたのです。また、ビザを持たないものには独自ビザまで発給しました。
https://www.sankei.com/article/20200923-KXDU4LBSUBJCPOSJIQD6BD65C4/
杉原と根井は、日露協会学校で2学年下(杉原が2個上)で学んだ関係のようですが、杉原が職を賭してまで繋いだ思いを、仲間である根井が繋ぐ。
そんな思いの伝承が感じられ、めちゃくちゃ感動しました。久しぶりに映画で泣けました。
知ってることばかりだろう、と軽い気持ちで身始めた映画でしたが、組織での振る舞いの難しさと、思いをつなげることの素敵さに、心を動かされた映画でした。