今、新幹線はアツいです。
北陸新幹線は、金沢以西を建設中で、どの駅に停めるか、街同士での引き合いがピークを迎えています。
(参考:加賀市新幹線対策室 http://www.tokyo2023kaga.jp/ )
北海道新幹線も、札幌駅をどこに作るかで議論が紛糾していたり、九州新幹線長崎ルートも、最近までフリーゲージトレインが検討されていたりしていました。
九州新幹線が全線開業した時のように、まだ新幹線が引かれていない街の人にとっては、新幹線が我が町を走ることは、待ち遠しい限りなのでしょう!
鉄道好きとしても、新幹線が日本中を走るようになることは、まさに夢のようです。
しかし、新幹線が盛り上がる一方で、こんな声もあります。
北陸新幹線などは、金沢以西について開業した場合、現在走っている特急が廃止されるのではないか、というものです。
新幹線はそう簡単に通勤通学で乗れるものではありませんし、ましてや駅も限られます。日常の足となっている特急の方が、利便性は高く、その廃止は地元の人にかなりのインパクトがあると思います。
JRにとってみれば、新幹線の利益を確保したい中、競合する特急を残すメリットはないということなのでしょう。また、新幹線一本にする方針を出すことで、街同士の駅の誘致合戦を激しくさせ、JRにとって有利な条件を引き出すことにもつながっているのかもしれません。
また、新幹線が開業すると、多くの場合、並行する在来線は、第3セクター化されます。
当該路線をJRとは経営分離し、第1セクター(地方自治体)と民間企業(第2セクター)が出資して新しい運営主体を作り、そこに経営を任せる方式です。
ただ、多くの第3セクター鉄道は沿線人口の減少と、新幹線とのパイの奪い合いから厳しい経営環境に置かれています。
新幹線を建設するおかげで、JRは不採算の在来線を自社から切り離すことができ、万々歳というわけです。
あれ、少しおかしくないですか。
新幹線は、需要があるから作るものではないのでしょうか?
並行する在来線は人口減少で経営が厳しい?ということは、そもそも新幹線自体、なぜ作るのでしょうか。
そこで、一つの疑問が出てきます。
新しい新幹線ってそもそも必要なんでしょうか。
1973年に制定された、全国新幹線鉄道整備法という法律があります。いわゆる「整備新幹線」として、整備計画が定められています。
・東北新幹線(盛岡~青森)
・北海道新幹線(青森~札幌)
・北陸新幹線(東京~長野~金沢~大阪)
・九州新幹線(福岡~鹿児島)
・九州新幹線(福岡~長崎)
の5つが、整備新幹線に指定され、その計画が、今やっと動き出しているということです。
(※2011年には中央新幹線が新たに指定されました)
この法律に基づき、計画が着々と着々と、40年近く温められてきたのが、今の新幹線というわけです。
そうした状況を踏まえるに、
JRの今の姿勢というのは、
まだ国鉄だった時代に国によって定められた新幹線計画を後継のJRが引き受けるから、その分並行する在来線は切り離させてくれ!!
そういうことなのでしょう。
なるほど・・・・・・。
僕は、正直言って新幹線は、もうこの国には必要ないと思います。
お金の無駄遣いをしていると思います。
東海道新幹線、山陽新幹線、東北新幹線(東京~仙台)くらいまでならわかります。
だって、大都市同士を結んでいて、都市間の行き来がしやすくなることは国全体としても大きな経済上のメリットがあるからです。仙台・大宮・東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡、と在来線だけでは物足りない大都市ばかりです。
僕は、これらの都市を高速鉄道で結ぶことは必要不可欠だと考えます。
一方残りです。
その中でも、今まさに建設中の新幹線を見てみます。
北海道新幹線なんて、東京札幌間は、新千歳空港が便利ですから札幌までは飛行機ですし、函館も函館市街地から遠く、函館―札幌は飛行機の方が便利だし、特急もあります。東北と北海道も、新幹線として別軌道で繋げる必要はないでしょう。
北陸新幹線も、中央新幹線が着工される今、バイパスとしては機能しないどころか、東京~大阪間を行き来するのにはかなり遠回りで、既存の交通手段も不便ではないでしょう。新幹線が通る都市の規模も小さすぎます。
九州新幹線も、わざわざ福岡と鹿児島を高速鉄道という別軌道で結ぶ必要性があまり感じられません。急ぐ人は飛行機でよいし、特急列車も走っていたはずです。長崎へも在来線特急で十分でしょう。
うーん、そう考えると、正直、もう新幹線は必要ないと思います。
北海道新幹線も空席率が高くてうまくいっていないと聞きます。北陸新幹線も開業ブーム以来、あまりいい噂を聞きません。
開業で世間が浮かれている陰では、第三セクター化した並行在来線が、苦境にあえいでいます。
前述のとおり、在来線にとっては稼ぎ頭の在来線特急が廃止されて乗客の多くが新幹線にリプレイスされてしまい、逆に不便になったりもするでしょう。
ですが、そうした開業後の苦しい実情とは裏腹に、新幹線が開業すると、なぜか景気が良くなりそうな印象を受けます。
新しい新幹線は、苦しい経済の「起爆剤」のように感じられます。
しかし僕は「新幹線」とは、まさに「夢物語」だと思います。
新幹線が開業することで、この街とこの街が繋がり、地域が発展する!
多くの人は、新幹線と聞いて、こう考えるのではないでしょうか。
恐らく、その発想は僕自身にもあって、長らく経済的に低調な日本、とりわけ地方にとっての、「救世主」として捉えがちです。
新幹線が開業すると、何か、よくなる気がする(笑)
人は、「新幹線」に「経済成長」という夢を重ねている。
だからみんな新幹線を作りたがる。駅を誘致したがる。
僕は、こうした構造は、「2020年東京オリンピック」も同じだと思っています。
オリンピックをやることで、何か景気が良くなる気がする。国が盛り上がる気がする。何か変わる気がする。
そんなものは幻想にすぎません。
残るのは、北京やロンドンにあるような、ハコモノを中心とした負のレガシーだけです。
たかがオリンピックごときで、この国の中身は何も変わりません。
「新幹線」と「オリンピック」。
今の日本にとって、これほど似たものはないと思っています。
国にとっての幻想がオリンピックであるならば、地方にとっての幻想が新幹線。
大阪にとっては万博でしょう。
正直、日本の将来は、明るくないと思います。一筋縄じゃいかない。
だけど、だからこそ、もっと真剣に考えるべきなのではないでしょうか。
新幹線とかオリンピックとか、夢も必要だと思います。夢が大切になるときもある。だけど、夢にしては、お金も、地域も、夢を実現した犠牲が大きすぎるように思うのです。
新幹線とかオリンピックとか、単純なもの、小手先のものに頼らず、本当に現実を変えてくれる方策をひねり出さないといけない。
鉄道好きとしては、新幹線が増えることは嬉しいですが、
これ以上、新幹線はいらないと思います。
日本を引っ張ってくれる夢の超特急なんてものは、存在しないのだと思います。